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七大本番3週間前。

ありえない方向に折れ曲がった指を見て、あまりのショックに道場のど真ん中でめまいを起こし倒れてしまった。

チームの士気を下げてしまう行為だ。あそこで心の平静を保てなかったことは今でも反省している。

診断は右薬指完全脱臼および側副靭帯損傷。医師からは2ヶ月間の安静と運動禁止を言い渡された。

もう無理だ、終わったと思った。

かれこれ10年ほど柔道をやってきた身だ。気持ちだけではどうにもならないことがあることは自分が一番わかっていた。

しかし。僕は人に恵まれた。たくさんの言葉をもらった。

「苦しくなってからが勝負だよ」
「柔道は相手との勝ち負けじゃない、自分との勝負だから」

まさにこういう言葉が欲しかった。残り少ないがやれるだけやってみよう。

特にトレーナーの久我さんには本当にお世話になった。忙しい中、最後まで僕のわがままを聞いて道場まで治療に来てくれた。

試合3日前になっても柔道着を握ることができない状態であったが、不思議と絶望はなかった。試合に出て、今まで支えてくれた全ての人へ恩返しをしなければならない。

それにモチベーションもあった。ぶっつけ本番での調整だったが、「俺はやれる」ということをみんなに見せたかった。

そして七大戦本番。本調子には程遠かったが、なんとかチームの一員として試合に出ることができた。

何より入部して初めての、願ってやまなかった七大戦での勝利を手に入れることができた。準決勝は紙一重だったが、出し切ったといってもいい。

怪我をしたのが遠い昔のようだ。奇跡のような3週間であった。本当に。幸せだった。こんな経験をさせてくれたチームのみんな、今まで指導してくれた先生方、先輩方、レベル差などかけ離れているのに、嫌な顔一つせず何度も稽古をつけてくれた日本大学柔道部の皆さん、僕と関わってくれた全ての人に本当に感謝している。

改めてここまで自分の話ばかり書いてきたが、本当にチームとして勝ててよかったと思う。試合後、何人かの後輩たちが今までありがとうございました、と声をかけてきた。優勝できなかったという悔しさこそ滲み出ていたが、みな自分たちの試合に納得しているようだった。

これでよかった。過去3年間、散々お世話になったのにも関わらず、1勝もできずに去っていった先輩方に対してなんと声をかけていいのか、本当にわからなかったのだから。

東京大学柔道部4年 東條 裕紀